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一つの穂に100粒を限度とする
刈り取りの適期は「穂の一番先のもみを付けた細い枝(枝梗)が黄色になったとき」と、乗松さんから聞きました。しかし、ふと疑問に思ったのは、一つの枝にたくさんのもみをつけていたら、先の方が黄色になり完熟していても、元の方のもみはまだ緑色のままのはず。たくさんのもみ全数が黄色になり完熟したときは、もうタイミングとしては遅いのではないのか。つまり、一つの穂に付くもみの数はバラバラなのだから、先ほどの判断基準はすべてにあてはまらないのではないかと思ったのです。
この疑問を乗松さんに投げかけてみたら、「一穂に120粒、150粒つけてしまうと、先の方が黄色で完熟胴割れ、元の方は緑色でタンパクが切れていない、その両方が出てしまいます。そうなると、刈り取り適期なんてどこにもない。だから、私たちの研究会では100粒以内に収めることにしています」。なんと一つの穂の米の数をコントロールできると言うのだ。「稲の葉は15枚出ます。その9枚目までに稲の体をつくるのです。茎の太さ、タンパクとでんぷんのたまり方で着粒数、いわゆるもみの数が決まるのですが、着粒数はコントロールできます」。田植えの仕方、植え付け本数、元肥の種類等でコントロールするのだそうです。「100粒にしましょうと決めたら、ああ、そうですかと100粒つける稲をつくってしまう。そういう人だったら、いい山田錦がつくれます。少なすぎる、あるいは、多すぎるという技術力の持ち主だったら、勉強し直してもらわないといけない」と、山田錦の栽培技術習得の必要性を説きます。

山田錦はやせ気味の田んぼで、やせ型で育てる
また、山田錦は肥えた土地ではもみが付き過ぎてしまうので、場合によっては、やせた田んぼに代えてもらうこともあると言います。「昔の米づくりとは正反対です。昔は肥えた土をつくることをいっしょうけんめいやりましたが、山田錦は少しやせ気味の田んぼの方がいい。そうすれば、大きな穂にならない。やせ型で育てる方がいいのです」と乗松さん。しかし、そうは言っても一穂に60、70粒だと収量が少なく、収入減になってしまいます。「品質はいいもので、しかも、ある程度の収量を確保しなくてはならない。ものすごく技術が要求されますが、それをやっていかなくてはなりません」と乗松さんはきっぱりと言います。そこで、静岡山田錦研究会では一穂100粒を上限にして、90、80粒に収まればよしとしているのです。

新たな試み、「稈基重」を計る
このことに関連して、乗松さんはまた新たな試みを考えています。「稈基重(かんきじゅう)を計ってみようと思っているのです」。稈とは稲の茎のこと。そのやり方は、稲一株のいちばん下の地ぎわを切り落とし、そこから上10cm分を切って、10本当たりの重さを計るというものです。 「重過ぎる(大き過ぎる)と穂が大きくなる。軽過ぎる(小さ過ぎる)と穂が小さくなる。100粒付けるちょうどいい重さがあるはず。会員全員の稈基重を計って、その中で100粒付けたものがあれば、その稈基重がいちばんいいということになるわけです」。 その稲をつくった人の土や、つくり方、肥料の使い方を調べれば、まねができる可能性があるかもしれないと乗松さんは言うのです。 「50例も調べれば理想的な稈基重が見つかるかもしれない。これは、まだ誰もその関連性を調べていないのです。おもしろいかもしれませんね」。 乗松さんは毎年、その年の作業が一段落すると、約二カ月かけて会員全員の稲の株茎の計測調査を行っています。そして、それは「稲体の形態調査表」としてまとめられ、新年1月下旬に開催される勉強会で全員に配布されます。 稈基重を調べることになると乗松さんの仕事がさらに増えますが、これでまた一つ、静岡山田錦研究会ならではのデータが確保されることになるかもしれません。研究会はどんどん進化しています。

次回は11月下旬に行われる成分分析会のレポートをお送りする予定です。 今年も全員がタンパク含有率7.0%以下を達成するか、こちらもぜひお読みください。

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