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静岡山田錦研究会 活動レポート20<2006年度>


  < 一年間の努力の集大成。山田錦の刈り取り行う。(その1)>  


10月3日午前の圃場。稲刈りは延期されました。



10月4日午前の圃場。稲刈りは終了しています。


 花の舞で使用する酒米の最高峰「山田錦」を栽培する地元農家のグループ「静岡山田錦研究会」の活動を報告するこのレポートも、いよいよ今年の大詰めを迎えようとしています。9月の下旬に花の舞土田杜氏による圃場(田んぼ)の評価が終わり、10月に入ると、いよいよ山田錦の刈り取りです。他の品種より遅く、ほとんどの会員の刈り取りは10月の上旬に集中しています。
静岡山田錦研究会の前会長(現相談役)乗松精二さんの刈り取りも例年10月上旬。今年は2日、3日に行うということなので、3日の朝お伺いしてみました。
乗松さんの田んぼがある場所は旧豊岡村(現磐田市)。浜松方面から行くと、天竜川に架かる浜北大橋を渡り、しばらく下流(南)方向に行った、天竜川東岸から100メートルくらいのところにあります。

 雨が降り出しそうなので、心配しながら田んぼに到着したところ、稲刈り機だけがポツンと田んぼの中に置かれたままで人影はありません。「ややや」と思い、乗松さんに連絡してみると。「稲に水分が残っているので午前中の刈り取りは見送りました。様子を見て、午後やるか、翌日に延期するか決めます」とのこと。そういえば、数日前からスカッと晴れない天気が続いていました。
そこで、もう一度行ってみようと、翌日の朝9時頃電話してみると、「あと30分くらいで作業は終わります」との言葉。「しまった」と思ってももう遅い。今回の静岡山田錦研究会レポートは作業風景の写真なしということになってしまいました。それでも話しは聞きたいと思い、乗松さんの事務所へ出掛けました。今回、写真がない分、しっかりと話を聞いてきたので、今回と次回の2回に分けてレポートします。


乗松さんの作業所の乾燥機。刈り取ったもみはできるだけ早く乾燥させる


稲刈りに水分は大敵
 雨降りだと作業がやりにくいのは分かりますが、なぜ、稲に水分があると刈り取りしないのか。きっと何か理由があるはず。乗松さんに、まず、そこから聞くことにしました。
「もし、雨続きで籾(もみ)に水分がたくさん含まれていたり、雨降りのときに稲刈りしたりすると、2時間から2時間半くらいでもみの変質が始まります。いわゆる蒸れが始まるのです」と乗松さん。そして、「気温が高いと6時間から7時間経つと全部がピンクや茶色に変色して蒸れ米というものになり、商品価値はゼロになってしまいます。酒米は変質が一番怖い。お酒にしたときに味が違うものになってしまうのです」と、稲刈りに水分が大敵であることを語ります。
刈り取りの際は、もみの表面からきれいに水分が飛んでいること。そして、稲刈りしてから少なくとも3、4時間以内に乾燥機に入れて乾燥することが重要で、そういう状況なら変質は起こりません。また、多少水分があっても、短時間で刈り取り、すぐに作業所へ持ってきて、乾燥機に入れ、風だけで乾かせば大丈夫。ただし、熱(温風)を入れたら絶対だめということです。だから、水分が多く含まれているときは刈り取りを延期するしかないのです。
乗松さんが10月3日午前中の稲刈りを中止したのは、まさしくこの理由によるものだったのです。

もみの完熟直後に刈り取る
 さらに、乗松さんに聞いた刈り取りのポイントは、酒米はもみが完熟していることが重要で、完熟直後に稲刈りをすること。「完熟前の、まだ、もみに緑色が残っている状態で稲刈りすると、タンパク質の含有量が多い。そういう米で酒をつくると雑味が出てしまいます。完熟するまで田んぼに置いておくのがベストです」と乗松さんは言います。
完熟した頃、雨が2日も3日も続いて稲刈りができないと、立毛中でも芽が出てしまう。そういう米を精米するともろいので砕けてなくなってしまうのだそうです。それほど、稲刈りはタイミングが重要なのです。
「刈り取りの適期の頃になったら、天気予報を見ながら、機械装備の調子を確認しておき、ここという時にパッとやらなくてはだめ。明日でも、明後日でもいい、などとのんきなことを言っていると、商品価値がゼロになってしまいます」と乗松さんが言うように、酒米は食用の米より気を使うのです。

枝梗(しこう)の色の変化を観察してタイミングを図る
 さて、それでは、刈り取りの適期はいつなのか、そして、それをどのように判断するのでしょうか。
稲を想像してください。稲一株には数本の茎があり、一番上の方に穂があります。穂をよく見ると、茎から出ている何本かの細い枝[これを枝梗(しこう)と言います]の先に実(もみ)を付けています。その、もみが黄色くなっていれば完熟している証拠です。枝は何本かありますが、一番先の枝がだんだん黄色になり(農家の人は「枯れる」と言います)、全体が黄色になったとき、そのときが刈り取りの適期に入った印です。
先から2番目の枝が黄色になったら要注意、すぐに刈り取りをしなくてはいけません。そして、先から3番目の枝の半分くらいが黄色になったときが限度。元の方まで全体が黄色になってしまったら刈り遅れです。静岡山田錦研究会ではこれらを判断基準としています。一般には帯緑もみは10%から15%の時と言われています。
「最初のころは、刈り取りの適期がわからないということで、会員からよく質問されましたが、今ではこの基準に基づいて各自で判断してやっています」と乗松さんは言います。
つまり、稲穂をよく観察して、細い枝(枝梗)の色の変化を見逃さないことが大切。そして、天気予報を欠かさずチェックし、1週間前、10日前から、いつ稲を刈るかを決める。雨が降ったらやむを得ず延期し、わずかでもチャンスがあったら、そのときに何をおいてでもやってしまう。これが、稲刈りの重要ポイントです。

もみ全体の先が黄色、元は緑色、この場合はどう判断するのか
 ここまで、乗松さんの説明を聞いて、ふと疑問に思うことがありました。穂の一番先の細い枝(枝梗)全体が黄色になったときが刈り取りのベストのタイミングと聞きましたが、一つの枝にたくさんのもみをつけていたら、先の方が黄色になり完熟していても、元の方のもみはまだ緑色のままのはず。たくさんのもみ全数が黄色になり完熟したときは、もうタイミングとしては遅いのではないのか。つまり、一つの穂に付くもみの数はバラバラなのだから、先ほどの判断基準はすべてにあてはまらないのではないかと思ったのです。この疑問を乗松さんに投げかけてみたら、思わぬ答えが返ってきました。それについては次回の「静岡山田錦研究会レポート」で詳しくお伝えします。
どうぞ、次回もお読みください。

   
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