ホーム > 山田錦研究会 > 一年間の努力の集大成。山田錦の刈り取り実施。


花の舞で使用する酒米の最高峰「山田錦」を栽培する地元農家のグループ「静岡山田錦研究会」の活動を報告するこのレポートも、いよいよ今年の大詰めを迎えようとしています。9月の下旬に花の舞土田製造部長による圃場(田んぼ)の評価が終わり、10月に入ると、いよいよ山田錦の刈り取りです。他の品種より遅く、ほとんどの会員の刈り取りは10月の上旬に集中しています。
今年は7月の日照不足の影響があるため、刈り取りの予定も多少ずれる可能性もあります。そこで、雨が降る10月2日、研究会の乗松精二相談役に電話で予定をお聞きしたところ、「雨があがったら、3日に一気にやってしまおうと思っています」との返事。はたして、3日は朝から快晴、もう一度当日電話すると、「稲が乾いた午後一から始めます」とのことで、山田錦の圃場に駆けつけました。
乗松さんの山田錦の圃場は旧豊岡村(現磐田市)。浜松方面から行くと、天竜川に架かる浜北大橋を渡り、しばらく下流(南)方向に行った、天竜川東岸から100メートルくらいのところにあります。到着すると、刈り取りの真っ最中でした。おそらく、コンバインに乗るのは息子の浩二さんだろうと思っていたのですが、実際運転していたのは乗松さんご本人でした。
今日中にあと3枚刈り取らなくてはいけないということなので、ゆっくり話は聞けませんでしたが、写真の圃場については「いつもの年より収量が多い」とのこと。米の大きさが2.0ミリ未満のものがどれだけあるかという問題はありますが、どうやら、今年は豊作のようです。
乗松相談役は雨をたいへん気にしていました。雨降りだと作業がやりにくいのは分かりますが、なぜ、稲に水分があると刈り取りしないのか。それについて乗松さんに聞くと、「もし、雨続きで籾(もみ)に水分がたくさん含まれていたり、雨降りのときに稲刈りしたりすると、2時間から2時間半くらいでもみの変質が始まります。いわゆる蒸れが始まるのです。そして、気温が高いと6時間から7時間経つと全部がピンクや茶色に変色して蒸れ米というものになり、商品価値はゼロになってしまいます。酒米は変質が一番怖い。お酒にしたときに味が違うものになってしまうのです」と、稲刈りに水分が大敵であることを語ります。
刈り取りの際は、もみの表面からきれいに水分が飛んでいること。そして、稲刈りしてから少なくとも3、4時間以内に乾燥機に入れて乾燥することが重要で、そういう状況なら変質は起こりません。また、多少水分があっても、短時間で刈り取り、すぐに作業所へ持ってきて、乾燥機に入れ、風だけで乾かせば大丈夫。ただし、熱(温風)を入れたら絶対だめということです。だから、水分が多く含まれているときは刈り取りを延期するしかないのです。
さらに、乗松さんに聞いた刈り取りのポイントは、酒米はもみが完熟していることが重要で、完熟直後に稲刈りをすること。「完熟前の、まだ、もみに緑色が残っている状態で稲刈りすると、タンパク質の含有量が多い。そういう米で酒をつくると雑味が出てしまいます。完熟するまで田んぼに置いておくのがベストです」と乗松さんは言います。
完熟した頃、雨が2日も3日も続いて稲刈りができないと、立毛中でも芽が出てしまう。そういう米を精米するともろいので砕けてなくなってしまうのだそうです。それほど、稲刈りはタイミングが重要なのです。
「刈り取りの適期の頃になったら、天気予報を見ながら、機械装備の調子を確認しておき、ここという時にパッとやらなくてはだめ。明日でも、明後日でもいい、などとのんきなことを言っていると、商品価値がゼロになってしまいます」と乗松さんが言うように、酒米は食用の米より気を使うのです。
さて、それでは、刈り取りの適期はいつなのか、そして、それをどのように判断するのでしょうか。 稲を想像してください。稲一株には数本の茎があり、一番上の方に穂があります。穂をよく見ると、茎から出ている何本かの細い枝[これを枝梗(しこう)と言います]の先に実(もみ)を付けています。その、もみが黄色くなっていれば完熟している証拠です。枝は何本かありますが、一番先の枝がだんだん黄色になり(農家の人は「枯れる」と言います)、全体が黄色になったとき、そのときが刈り取りの適期に入った印です。
先から2番目の枝が黄色になったら要注意、すぐに刈り取りをしなくてはいけません。そして、先から3番目の枝の半分くらいが黄色になったときが限度。元の方まで全体が黄色になってしまったら刈り遅れです。静岡山田錦研究会ではこれらを判断基準としています。一般には帯緑もみは10%から15%の時と言われています。
「最初のころは、刈り取りの適期がわからないということで、会員からよく質問されましたが、今ではこの基準に基づいて各自で判断してやっています」と乗松さんは言います。
つまり、稲穂をよく観察して、細い枝(枝梗)の色の変化を見逃さないことが大切。そして、天気予報を欠かさずチェックし、1週間前、10日前から、いつ稲を刈るかを決める。雨が降ったらやむを得ず延期し、わずかでもチャンスがあったら、そのときに何をおいてでもやってしまう。これが、稲刈りの重要ポイントです。
翌々日の10月5日には太田副会長の圃場で山田錦の刈り取りが行われました。今にも雨が降り出しそうな空の下、息子の太田剛志さんと従業員さんとでてきぱきと作業が進められていました。
トラックに積まれた刈り取られたばかりのもみを手のひらに乗せながら、剛志さんは「質はいつもと同じくらい。おそらく量も例年並みだと思います」と、今年の出来について語りました。ちなみに、太田さんは去年(平成20年度)、研究会の表彰において、優秀な山田錦をつくったことで、JA農産物検査員選考表彰者に選ばれています。今年も上質な山田錦が期待できそうです。